編み物の道具は編み針に始まり、縄編み針や、目数リング、段数リング、休み目用の大型の安全ピンみたいなものや、棒編み針の先にほつれどめをするキャップ、ゲージを測る専用のスケール、ピン留めするための毛糸専用のまち針、など書き出すと延々と続く。
じゃあ一つ買うとそれでOKかというと、そういうわけでもなく、作品ごとにそれぞれ必要な道具というのが違ってくる。
例えば、一段が長い場合、4本か5本の編棒がひと組になった物を使って、横に繋ぎ合わせて、長い編み地を作り、その編棒の本数によってキャップの数も多くなる。
また、網図が全て書かれている場合はそのまま編んでいけば良いが、省略されている場合は段数を数えるリングが必要となる。
目数リングもかぎ針の場合はリングに隙間のあるタイプで段を数えなければならないし、と枚挙にいとまがないのだ。そんなこんなで道具は数え切れないほど持っている。
みなさんそうだと思うけれども、棒針の場合はやはり竹で作られたものがいい。プラスチックの編み針で編む場合に、毛糸に化学繊維が少しでも含まれるとどんどん編み地が伸びてしまう。摩擦で棒針に糸が絡んだ方が、ゲージ通りに編めるというものだ。
棒針に毛糸がきゅっと絡みながらも、スルッと糸割れせずに針先を滑っていく感覚というのが編んでいて病みつきになるポイントだ。またあの感覚が欲しい、そう思ってしまう。
縄編み針はプラスチック製がいい。スルッと滑りながらも、互い違いにした糸をうまく編んでいくのに滑らかだ。
縄編針の場合、フック型と凸型の2パターンあるが、私の場合、フック型は、1目交差の際に使用し、凸型は何目かを交差するときに使用する。フック型を使っていると、1目だけ落としておくので、まるで組紐を編んでいる感覚になる。
ちなみに、ネットの動画を見ていると全く道具を使わず縄編みをしてしまう人というのもいるが、私はその域に達していないし、目指してもいない。あくまでも素人の横好きなのだ。
道具自体は私が子供の頃とそれほど変わらないが、2020年代の今は、編み針を収納する布製のケースや、編み出しをサポートするナイロン製の紐など専用のものがたくさん売られていて面白い。
70年代、私が子供の頃、すでに機械あみ機というのがあって、それを教える人というのを職業にしている人たちを見かけたし、編み物雑誌にもそういう機械が紹介されているのだけれど、なぜだか手編みというのは細く長く続いているようだ。書店でも新しく編み物雑誌が発刊されていて、むしろ今は息を吹き返しているようだ。
編み物の文化は機械革命が起きても、結局手で作ることがいいみたいなことになる。人の手の温もりが籠ったような毛糸というのが素敵なのだろうな。